「何やってんだよ!」
もう少しでおちそうだった私を、彼は必死で地上へつなぎとめた。
私はきょとんとして、彼を見つめた。
「もうちょっとで死ぬとこだったんだぞ、何してんだよお前!」
彼はものすごい剣幕で私を怒った。
私はそれでも微笑んだ。作った笑みじゃない。自然な、微笑み。
「死ぬ、ね。悪くないと思うよ、死ぬのもさ」
「馬鹿かお前は!」
「どうせ馬鹿よ」
彼は大きなため息をついた。
ため息をつくと幸せが逃げていっちゃうのよ。
言おうと思ったけど、やめた。
「お前、最近変だぞ? 大丈夫か?」
「変なのはもともとよ。いろいろと大丈夫じゃなかったらこんなことしなくってよ?」
彼はもう一度、ため息をついた。
「どうしたんだよお前」
「別にどうもしないわ。ただ思考を変えただけ」
「どんな思考か聞かせてもらおうじゃねぇか」
「私が死んでも誰も気にしない」
彼は心底、驚いたようだった。
まぁそれはそうだ。
だって私と彼は恋人同士だから。そんなこと私が思ってるなんて、思いもしなかっただろう。
「誰も気にしない、って・・・・・・。お前それは、俺の存在を忘れた上で言ってるのか?」
「いいえ、あなたのことは決して忘れてないわ」
「じゃあなんで!」
「だってあなた、私と別れたいんでしょ?」
悪戯っぽく笑って、私は言った。
彼はまた、驚いた。
だってこのことは、あの子にしか言ってなかったものね。
「おまえ、それ、誰から・・・・・・」
「誰から? そんなの、あなたの口からに決まってるじゃない」
「まさかお前・・・・・・聞いてたのか?」
「さぁね?」
私はクスッと笑った。
彼は絶句して、立ち尽くしていた。
「私ね、別に今死んでも悔いはないのよ。ちょっとだけだったけど、幸せな時間を過ごせたから」
「ちょっとだけ、って」
「ちょっとだけ、でしょ?」
私は言った。
オチはない。
あるけどもう面倒なってきた。
とりあえず思いつきで書いた。
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