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奇子 ~クラヤミショウジョ

 それは当然だった。
 あたしにとってごく当り前で、ごく普通だった。

 異常だけど。

 人の異常はあたしの普通。あたしの普通は人の異常。
 だって、ねぇ?

 冷たい地下、暗闇の中で生きるのは、あたしくらいでしょう?

 


 もう何年も、私は光を見ていない。
 世間は私の存在すら知らず、生まれたことさえも、この冷たい地下にあった。
 大人の汚れた手のひらは私と包み、包まれた中にある消えない罪の正体を知る。
 あたしは罪だ。
 
 罪だから、もっと壊れて狂っておかしくなってもいいと、ある時悟った。

 咲いた花はいずれ朽ち、羽ばたいた鳥はきっと堕ちる。
 それらはみーんな人々の記憶からなんて消えていくのだ。
 ならそうなればいい。
 ならそうなればいい。
 朽ち、堕ちて、消えてしまえばいい。

 ねぇ? そうでしょ?



 最初はお姉様だった。
 お姉様はいつもあたしと接しているよりも遥に幼く、そしてみじめな有様になっていた。
 
 「ねぇ、お姉様?」

 聞かせて?
 奪った光、冷たい土の下、塞いだ穴の中、知られない事実。
 ねぇ、お姉様?

 「聞かせて?」

 真っ赤なその頭顔口で、ね?



 次はお母様だった。

 「ねぇ、お母様?」

 あたしきっと、ずっと待ってたの。
 いつかこんな日が来るのを、ずっとずっとずっと待ってた。
 だってここは、闇は、あたしの世界だもの。
 人は闇に屈し、その中で私は生きて、闇はあたしだけの世界で、だからここではあたしがすべてで。

 「聞かせて?」

 積もった恨みの晴らし方。
 ああ、やっぱりいいかも。

 もう結構、晴らしてるし。

 「さぁ、お母様」

 素敵な棺桶は、冷たい土の中ですよ、お母様。



 あたしはずっと、ここで生きていく。
 暗闇というあたしの世界で、あたしと、二つの棺桶とで生きていくの。

 
 だってあたしは奇子だもの。
 奇子、罪の子だもの。




 (狂った秩序と不快な連鎖、彼女らがたどったのは、愚かな末路――)



あんきもの「奇子」がもとです
なんか書いてて楽しかった。
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